使い慣れた入れ歯
こんにちは。
目白バイオインプラントセンター・
田中歯科クリニックの田中宏和です。
お食事中の方はすみません・・・
ある患者さんの10数年、お使いになっている
入れ歯です。
3本だけご自分の歯が残っているのですが
それも決して良い状態ではなく、
「とりあえず噛めるために作っておきましょう」
と当時、作成したものです。
ステインが人工歯と床の隙間に入りこみ
(こういう古い汚れはもう取れないのです・・・)
大分汚れて、年季が入っております。
しかし、その他は比較的綺麗で丁寧に大事に使って
いただいているのが良く解ります。
しばらく仕事のご都合で遠方にいらしたのですが
この前およそ5年ぶりぐらいに久々に来院されたので
「もう大分、汚れてきたので新しく作りましょう!」
と丁寧に印象を採得し、人工歯も旧義歯と同じになるよう
排列し、新しく作成しました。
「きれいになったわ!」
と喜んでお帰りいただき、その後数回の微調整を
行い、終了しました。
そしてそれから半年後の定期健診時・・・
なんと前の入れ歯が口腔内に装着されています。
「あれ?」
「うん、初めは新しいのを使っていたんだけど
あるとき、古いのに戻したらやっぱりこっちの方が
慣れているし使いやすいのよぉ~ (^^♪」
とのこと。。
こういうことって日常の臨床ではよくあることなのです。
どちらも私が同じように作ったのですが
口腔内では全く同じというわけにはいきません。
お口の感覚は例えば髪の毛1本を噛んでもあれ?と
分かりますよね?
何ミクロンという単位でズレていても認識できるほど
敏感に感じるものなのです。
もうひとつは使いこんだことによって
人口歯がその方の噛むクセがついていい具合に
すり減っていること・・・
例えば履き慣れた靴を思い浮かべてみてください。
使っているうちに靴がその方の足の形を覚えてきますよね?
それに比べて卸したての新品の靴は
履きにくいですよね?
靴ずれをおこしたりしますし・・・
つまりこの入れ歯はもう患者さんの身体の一部に
なってしまっているわけです。
もちろん私としても壊れているわけでもないので
使いやすいほうを使っていただくのがいいと思います。(^^♪